悩み相談事例 1
会社員のDさんから、「夫と離婚しようか悩んでいます」という相談を受けました。
最初から「離婚」というキーワードが出てくるということは、かなり切羽詰った状況であることが予想されます。
このような場合、まず、その原因を1つずつ棚卸し、整理する必要があります。Dさんにもう一度、結婚生活で不満に思っていること、不安に感じていることと向き合って頂くのです。
私は、Dさんから、離婚を考えるようになった経緯を具体的にお聞き致しました。やり直すという選択肢も含め、一緒に最良の道を模索し始めたのです。
しかし、セッションを進めていくなかで、Dさんは、もう離婚を決意されている印象を受けました。
私は何回目かのセッションの時に、「Dさんは、既に答えを出されているような気がしますが・・・。そして、その答えを正当化するための理屈を探しているように見えますが如何でしょう?」と尋ねました。
Dさんは、少し黙っておりましたが、「たしかに、そうかもしれません。実は・・・」と、これまで、私に話さなかった新たな事実を教えてくれました。
私は、Dさんは離婚に向けて、誰かに背中を押して欲しいという印象を受けましたが、あえて、それには触れませんでした。そして、「そこまで離婚に拘る前提は何でしょう?」と、離婚を考える前提の解体に入りました。
なぜなら、離婚を考える前提が、本当に正しいのかを見つめ直して欲しかったからです。
Dさんの場合、離婚は避けられないようでした。むしろ、Dさんが思いとどまっているのは、離婚が本当に出来るのか、そして、離婚後の生活は大丈夫なのか、という不安が主な原因のようでした。
ここから、私とDさんは、不安を取り除くためにはどうすれば良いかを一緒に考え、Dさんの心にくすぶっている様々な不安を潰していきました。そして、全ての不安が解消された時、2人の数ヶ月間に及ぶコーチングセッションは終了したのです。
今回の悩み相談のコーチングセッションは、前半は離婚をして本当に後悔しないか、そして、後半は離婚を決断した後の不安がテーマになりました。
離婚は、結婚の何倍もエネルギーを使います。結婚生活に対する不安をマリッジブルーといいますが、それは幸せの中にあるほんの少しの不安です。離婚は、不安がほとんどを占め、でもその中に、今の状態から解放されるという一筋の光明があるような状況ではないでしょうか?
親権、財産、将来、世間体・・・、本当にたくさんの不安と離婚は向き合わなければなりません。だからこそ、決断される前に、1つ1つの要因や、そう考える前提と向き合う必要があるのです。決して、あとで後悔しないためにも・・・。
主婦のAさんから、「夫婦関係が上手くいっていません。向こうはどう思っているか知らないけど、自分は旦那に対して、愛情を持てなくなってしまいました」という相談を受けました。
このような人間関係、特に夫婦関係での悩み相談では、私は常に、本人に早急な結論を出させないように心掛けております。
例えば、私が早く相談の真意を知りたくて、「では、離婚をしたいということですか?」と、いきなり質問してしまうと、Aさんに離婚という選択肢を与えてしまうことになりかねません。
おそらく、今回のケースのような悩み相談は、本人も自分がどうしたいのかが分からずに、何となくモヤモヤしているというパターンが、多いのではないでしょうか?
そこで私は、まず次のように質問しました。
「Aさんがそのように思うのは、何か具体的な理由があると思いますが、どんなことがありましたか?」
Aさんの答えは、「何十年も一生懸命、手の込んだ料理を作ってきたのに、一度も美味しいと褒められたことがありません。それでも別に良いと若いときは思っていましたが、周りの友人の話を聞くと、どの旦那さんもそんなことはないようです。そういう気配りのなさが、最近気になってしょうがありません」というものでした。
ここで見えてきたことは、「料理を褒められたことがない」イコール「料理を褒められたい」というAさんの願望です。
つまり、旦那さんに無関心になったというよりは、むしろ旦那さんの愛情を求めているという感じが見て取れます。
私は、続けてこのように質問をしました。
「Aさん、あなたは、どうして一生懸命料理を作るのでしょうか?」
するとAさんは、「そりゃ、旦那の健康が心配だからです。バランスの良い食事を取って、病気にならないでいてほしいからです」と答えます。
あれっ? 愛情が持てないと言っていたのに、旦那さんの身体を心配していますね。この辺にAさんの本心が隠れているかもしれません。ここをもう少し突っ込んで、Aさんの心の中を探ってみましょう。
私は、「旦那さんの健康を心配する理由は何ですか?」と尋ねました。
Aさんは、きっぱりと「旦那が体を壊して働けなくなったら、経済的に困るからです」と言い放ちました。そして、こう続けます。
「自分は専業主婦だし、子供も独立していないので、まだまだお金はかかります。旦那にはしっかり働いてもらわないと困るんです」
うーん、なるほど。旦那さんは家にお金を持ってきてくれればいい、心配しているのは愛情のせいではない、というわけですね。
Aさんの表現の仕方が一気にきつくなってきたので、もう少し気持ちを吐き出してもらうため、私は続けてこう質問しました。
「料理を一生懸命作るのは“旦那さんに健康でいてもらいたいから”とおっしゃいましたが、それは“お金をちゃんと稼いできてほしいから”ということなんでしょうか?」
「そうですよ」と、Aさんは間髪いれずに答えました。
愛情から言っているのではなく、世帯主としての責任を果たしてほしいということですね。うーん、かなり感情的な表現になってきました。
しかし、そう答えながらもAさんの口調にはどこかためらいのようなものがあるのを私は感じていました。
そこで、全く違う角度からの質問をぶつけてAさんの反応を試してみました。
「では、Aさん、仮に今日旦那さんが会社で倒れた。病院で診察してもらったら、手術をしないと助からない。手術をしても助かる確率は10パーセント以下だと言われたら、どうお感じになりますか?」
すると、Aさんは、「そりゃ、不安になりますよ」と答えました。
当たり前の答えですね。ただ、問題はその不安の裏にあるものは何かということ、そして、Aさんがそれに気づいているかどうかということです。
ここまで来たら、思い切ってズバリ核心を突く質問をぶつけます。
「その不安は、旦那さんがこの世からいなくなってしまうかもしれないという、寂しさからの不安ですか?それとも、旦那さんがいなくなると経済的に困ることに対する不安ですか?」
Aさんは、しばらく考えた後、「寂しさからの不安のような気がします」とポツリと言いました。
私は「あれ? ちょっと矛盾していませんか? 先程、旦那さんに対する愛情はもうない、世帯主としてお金をきちんと稼いでくることのみ期待している、とあなたは言いましたが・・・」と尋ねてみました。
しばらく無言だったAさんが、「あぁ、やっぱり、なんだかんだ言っても、私は旦那のことを心配しているんですね」と、笑いながら言いました。
今回の悩み相談のコーチングセッションでは、Aさんの中に眠っていた、本人も気付かなかった旦那さんへの想いを引き出すことに成功しました。
コーチングとしてのポイントは、Aさんの発言に矛盾が出たところです。ここで一気に流れが変わりました。
Aさん夫婦の場合、旦那さんにも問題がありますので、これで「めでたし!めでたし!」となるわけではありません。
しかし、旦那さんへの愛情に気づいたことで、旦那さんへのAさんの接し方が変わり、それによって、旦那さんも変わっていくことは、十分に考えられます。
この悩み相談のコーチングセッションでは、そのきっかけを作ることができました。
Aさん夫婦のように愛情表現が下手な中高年の夫婦は、日本では多いと思います。
ときに、ボタンの掛け違いのように、ささいなことが積み重なって、今回のケースのように自分の気持ちを自ら演出してしまうこともあります。
でも、本音はそうではなく、実は根っこの部分で繋がっているケースが多いんですね。
そこをいかに引き出せるかです。
私は離婚係争中の案件も扱ったことがありますが、そんな状況でも、相手がかわいそうだというセリフを何度も耳にしました。夫婦とは、そういうもののような気がします。
夫婦関係を長く続けていると、ときに、相手の存在が近くなりすぎて、陥ってしまうトラップがあります。
そんなときは、悩み相談をする前に、相手が本当にいなくなったときの自分を、ちょっと想像してみてはいかがでしょう?
※他にも悩み相談の事例を、私が代表を務める“富岡コーチ&コンサルタント事務所のホームページ”で公開しております。ぜひご覧になって下さい。
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